📌先端研酒井研OBの阿部陽平さんの論文がPNAS誌に掲載されました

UCSDのGlass研に留学中の東大先端研酒井研OB 阿部陽平さんの論文がPNAS誌に掲載されました。

【論文情報】
タイトル:A TLR4/TRAF6-dependent signaling pathway mediates NCoR coactivator complex formation for inflammatory gene activation.(Toll-like receptor 4 / TRAF6 シグナル経路は、NCoR コアクチベーター複合体の形成を誘導し、炎症性遺伝子を活性化する)

著者: Abe Y, Kofman ER, Ouyang Z, Cruz-Becerra G, Spann NJ, Seidman JS, Troutman TD, Stender JD, Taylor H, Fan W, Link VM, Shen Z, Sakai J, Downes M, Evans RM, Kadonaga JT, Rosenfeld MG, Glass CK.

【論文のポイント】
・NCoR (nuclear receptor co-repressor) 欠損マクロファージでは、TLR4 シグナルによって誘導される炎症性遺伝子の発現が抑制されること (Cell. 2013) を改めて確認しました。
・TLR4 リガンド刺激依存的に、NCoR/HDAC3/PGC1β/p300/ERK1 複合体が転写因子 NFκB-p65 と共に炎症性遺伝子上に局在し、遺伝子の転写を活性化することを発見しました。
・TRAF6 をノックダウンしたマクロファージでは、TLR4 リガンド (および RANK リガンド (Mol Cell. 2023)) 刺激依存的な NCoR 複合体形成と HDAC3 による PGC1β の脱アセチル化が抑制されました。
(参考:NCoR/HDAC3 が PGC1β と結合すると、HDAC3 はヒストンではなく選択的に PGC1β を脱アセチル化するため、遺伝子の転写が活性化される (Mol Cell. 2023))
・TRAF6 下流のリン酸化酵素 ERK1 は NCoR/HDAC3 タンパク質の遺伝子局在を制御し、TBK1 は HDAC3 の酵素活性を促進させることで、相乗的に NCoR/HDAC3/PGC1β/p300/ERK1 複合体による炎症性遺伝子転写活性を誘導することを発見しました。
・この発見は、従来から知られていた HDAC3 阻害薬が炎症を抑制するという事実に新たなメカニズムを与えることができました。