高橋宙大助教、伊藤 亮助教、秋田大 松村欣宏教授(元東大・東北大 酒井研准教授)酒井寿郎教授の総説論文がBioEssaysに掲載されました。
【論文情報】
Takahashi H, Ito R, Matsumura Y, Sakai J. Environmental factor reversibly determines cellular identity through opposing Integrators that unify epigenetic and transcriptional pathways. Bioessays, e2300084 (2023)
【論文概要】
私たちは、絶えず外部からの環境刺激に曝されており、生存のためこれらの環境ストレスに適応する仕組みを持っています。環境適応の急性期には、細胞は遺伝子の転写を急速に変化させ、細胞の機能を増減させることで環境に適応していきます。一方、環境刺激が長期に持続する場合などには、特定の細胞(脂肪細胞など)は顕著な可塑性を示し、遺伝子転写の変化に加え、働く遺伝子と働かない遺伝子を決定している「エピゲノム」というゲノムの後天的な調節機構をも変化させることで環境に適した性質に細胞の「質」を変化させ、新たな細胞機能を獲得することで環境に適応していきます。
東北大学大学院医学系研究科の酒井寿郎教授、秋田大学大学院医学系研究科の松村欣宏教授、東北大学大学院医学系研究科の高橋宙大助教、伊藤亮助教は、環境刺激に伴いエピゲノムの変化と転写の変化が統合的に制御され、環境に適応する仕組みに関する新しい仮説を提唱する総説論文を発表しました。
本総説論文では、環境適応において、エピゲノムの変化と転写の変化の両方を制御する因子「インテグレーター」が存在し、これが環境刺激を感知して、エピゲノムと転写の変化を統合的に誘導することで細胞の質を変化させるという仮説(図)を提唱し、寒冷環境への適応などを例にインテグレーターを介して細胞が環境適応する仕組みについて考察しました。
本総説論文により今後、細胞が環境に適応する分子メカニズムに関する研究が加速し、生後の環境によって体質が変化することで発症する生活習慣病などの疾患に対する新たな治療法や予防法につながることが期待されます。
本研究成果は2023年11月27日に国際科学誌『BioEssays』に掲載されました。
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