松村欣宏准教授、 魏范研教授(加齢研)、酒井寿郎教授らによる RNA修飾と生活習慣病に関する総説論文がNature MetabolismにOnlineで掲載されました。

松村欣宏准教授、 魏范研教授(加齢研)、酒井寿郎教授らによる RNA修飾と生活習慣病に関する総説論文がNature MetabolismにOnlineで掲載されました。

 

Title: Epitranscriptomics in metabolic disease

Author: Yoshihiro Matsumura*, Fan-Yan Wei*, Juro Sakai#(*筆頭著者、 #責任著者)

雑誌名:Nature Metabolism

DOI番号:10.1038/s42255-023-00764-4

 

RNA修飾と代謝性疾患の関係性
―生活習慣病の新たな治療法や予防法の開発に期待―   

2023年3月23日に国際科学誌『Nature Metabolism』オンライン版

 

【概要】

肥満や糖尿病などの生活習慣病の発症には、環境要因が深く関わっています。これまでの生活習慣病の研究では、遺伝子や後天的ゲノム修飾(エピゲノム)に着目した研究が中心に行われてきました。RNA修飾はRNAの安定性、細胞内局在、および翻訳の効率を調節することにより、遺伝子発現に大きな影響を与えます(図)。近年、RNA修飾と生活習慣病に関する研究が報告されていますが、これらの研究を概説した総説はありませんでした。

東北大学大学院医学系研究科/東京大学先端科学技術研究センターの酒井寿郎教授、東北大学加齢医学研究所の魏范研教授、東北大学医学系研究科の松村欣宏准教授は、RNA修飾(エピトランスクリプトミクス)と代謝性疾患の研究について概説した総説論文を発表しました。

本総説論文では、生体内におけるRNA修飾の役割を説明し、RNA修飾と生活習慣病の最新の研究を概説しました。また環境要因がどのようにRNA修飾を制御し、RNA修飾がどのように後天的ゲノム修飾と関わり、疾患の発症や予防に働くのかについて考察しました。

本総説論文により今後のRNA修飾に着目した生活習慣病の研究が加速し、肥満や糖尿病に対する新たな治療法や予防法につながることが期待されます。

本研究成果は2023年3月23日に国際科学誌『Nature Metabolism』オンライン版に掲載されました。

 

東北大学

https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/03/press20230324-02-rna.html

医学系研究科

https://www.med.tohoku.ac.jp/5368/

加齢医学研究所

https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/news/16785/

 

 

RNA修飾と生活習慣病に関する総説論文を発表

-新たな治療法や予防法の開発に期待-

 

【発表のポイント】

  • 生体内におけるRNA修飾注1の役割、およびRNA修飾と生活習慣病注2の関わりについて概説した。
  • 環境要因によるRNA修飾の制御、RNA修飾と後天的ゲノム修飾注3の関わりについて考察した。
  • RNA修飾に着目した生活習慣病の研究によって、肥満や糖尿病に対する新たな治療法や予防法の開発が期待される。

 

【発表概要】

肥満や糖尿病などの生活習慣病の発症には、環境要因が深く関わっています。これまでの生活習慣病の研究では、遺伝子や後天的ゲノム修飾(エピゲノム)に着目した研究が中心に行われてきました。RNA修飾はRNAの安定性、細胞内局在、および翻訳の効率を調節することにより、遺伝子発現注4に大きな影響を与えます(図)。近年、RNA修飾と生活習慣病に関する研究が報告されていますが、これらの研究を概説した総説はありませんでした。

東北大学大学院医学系研究科/東京大学先端科学技術研究センターの酒井寿郎教授、東北大学加齢医学研究所の魏范研教授、東北大学医学系研究科の松村欣宏准教授は、RNA修飾(エピトランスクリプトミクス)と代謝性疾患の研究について概説した総説論文を発表しました。

本総説論文では、生体内におけるRNA修飾の役割を説明し、RNA修飾と生活習慣病の最新の研究を概説しました。また環境要因がどのようにRNA修飾を制御し、RNA修飾がどのように後天的ゲノム修飾と関わり、疾患の発症や予防に働くのかについて考察しました。 本総説論文により今後のRNA修飾に着目した生活習慣病の研究が加速し、肥満や糖尿病に対する新たな治療法や予防法につながることが期待されます。 本研究成果は2023年3月23日に国際科学誌『Nature Metabolism』オンライン版に掲載されました。

 

【詳細な説明】

研究の背景

肥満や2型糖尿病などの生活習慣病は、21世紀の世界的な健康問題となっています。2型糖尿病の患者とその予備軍の数は、過去30年間で急速に増加しております。肥満や2型糖尿病は、遺伝的要因と環境要因が複雑に関わり、発症につながります。環境要因として、食習慣、運動習慣、飲酒等の生活習慣があげられます。生活習慣病の効果的に予防するためには、遺伝的要因と環境要因の両方を考慮した統合的なアプローチが必要です。環境要因は細胞内に伝わり、後天的ゲノム修飾(エピゲノム)を変化させます。DNAのメチル化やヒストンタンパク質の化学修飾がエピゲノムにあたります。これまでの生活習慣病の研究では、遺伝子やエピゲノムに着目した研究が中心に行われてきました。しかし、生活習慣病の予防と治療の取り組みは、限られた成功しかおさめていませんでした。

 

今回の取り組み

遺伝子が発現するには、DNAの遺伝情報がまずRNAに転写され、その後RNAがタンパク質に翻訳される必要があります。DNAから転写されたRNAは、約170種類もの多様な化学修飾を受けることが知られています。エピゲノムがDNAからRNAへの転写の過程を調節するのに対し、RNA修飾はRNAの安定性、細胞内局在、翻訳の効率を制御することにより、遺伝子発現に大きな影響を与えます。RNA修飾の研究をエピトランスクリプトミクスと呼び、近年RNA修飾と生活習慣病に関する研究が報告されています。しかし、これらの研究を概説した総説はありませんでした。東北大学大学院医学系研究科/東京大学先端科学技術研究センターの酒井寿郎教授、東北大学加齢医学研究所の魏范研教授、東北大学医学系研究科の松村欣宏准教授は、生体内におけるRNA修飾の役割を説明し、RNA修飾と代謝性疾患の研究について概説した総説論文を発表しました。さらに、環境要因がどのようにRNA修飾を制御するのか、RNA修飾とエピゲノムがどのように関わるのかについて考察しました。

 

今後の展望

本総説論文により、生活習慣病におけるRNA修飾の重要性が広く伝わることで、今後のRNA修飾に着目した生活習慣病の研究が加速し、肥満や糖尿病に対する新たな治療法や予防法につながることが期待されます。

 

【謝辞】

本研究は、文部科学省 科学研究費 基盤研究(A)「シグナル感知エピゲノム酵素による世代を超えた環境適応機構の解明」(JP21H04826)、基盤研究(B)「RNAモドミクスを基軸とする新規核酸生理学の開拓」(JP21H02659)、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「健康・医療の向上に向けた早期ライフステージにおける生命現象の解明」研究開発領域における研究開発課題「生活習慣病予防に働く早期ライフステージの生活環境記憶の解明」(JP20gm1310007)、国立研究開発法人 科学技術振興機構 創発的研究支援事業(FOREST)「RNA修飾が創発する生命原理の理解と応用」(JPMJFR205Y)等の支援のもとで行われました。

 

【用語解説】

  • RNA修飾:DNAから転写されたRNAが受ける多様な化学修飾。RNA修飾の研究をエピトランスクリプトミクスと呼ぶ。現在までに約170種類におよぶRNA修飾が見つかっている。RNA修飾は、RNAの安定性、細胞内局在、翻訳の効率を制御する。
  • 生活習慣病:食習慣、運動習慣、飲酒等の生活習慣(環境要因)が、その発症・進行に関わる疾患。例えば、糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧症。
  • 後天的ゲノム修飾:ゲノムDNAのメチル化、ヒストンタンパク質の多様な化学修飾。エピゲノムとも呼ばれる。環境要因は細胞内に伝わり、後天的ゲノム修飾を変化させ、遺伝子発現を調節する。後天的ゲノム修飾の異常は、生活習慣病の発症と関わる。
  • 遺伝子発現:遺伝情報をもとに目的のタンパク質をつくるまでの過程を意味する。細胞内でDNAは先ずRNAに転写され、RNAはタンパク質に翻訳される。

 

【論文情報】

Title: Epitranscriptomics in metabolic disease

Author: Yoshihiro Matsumura*, Fan-Yan Wei*, Juro Sakai#(*筆頭著者、 #責任著者)

 

論文タイトル:代謝性疾患におけるエピトランスクリプトミクス

著者:松村 欣宏、魏 范研、酒井 寿郎

雑誌名:Nature Metabolism

DOI番号:10.1038/s42255-023-00764-4