略歴

2016年 3月 明治薬科大学薬学部薬学科 卒業
2019年 4月 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2020年 3月 東京大学大学院医学系研究科博士課程 修了
2021年 4月 東北大学大学院医学系研究科助教(分子代謝生理学分野)現在に至る

原著論文

  1. Yohei Abe*, Yosuke Fujiwara*, Hiroki Takahashi*, Yoshihiro Matsumura, Tomonobu Sawada, Shuying Jiang, Ryo Nakaki, Aoi Uchida, Noriko Nagao, Makoto Naito, Shingo Kajimura, Hiroshi Kimura, Timothy F. Osborne, Hiroyuki Aburatani, Tatsuhiko Kodama, Takeshi Inagaki, Juro Sakai(*Equal Contribution).
    “Histone demethylase JMJD1A coordinates acute and chronic adaptation to cold stress via thermogenic phospho-switch.”
    Nature Communications., 2018;9(1):1566., doi: 10.1038/s41467-018-03868-8.

 

所属学会

日本生化学会

論文解説

    1. 齧歯類には褐色脂肪細胞と、慢性寒冷への暴露等により本来熱産生能を欠く皮下白色脂肪組織(scWAT)中に誘導されるベージュ脂肪細胞の、2種類の熱産生脂肪細胞が存在する。ヒストン脱メチル化酵素 JMJD1A(Jumonji domain-containing 1a)は、その欠損マウスが肥満・寒冷暴露による低体温の表現型を示し、エネルギー代謝の制御において重要な役割を担う事が知られている。褐色脂肪細胞では、急性寒冷暴露を模倣したIsoproterenol刺激によりβアドレナリン受容体シグナルが入ると、JMJD1AはプロテインキナーゼAにより265番目セリン(Ser265)でリン酸化される事で寒冷シグナルを感知し、足場タンパク質として機能する事で、脱メチル化酵素活性非依存的に熱産生遺伝子転写を急速に促進する事が報告されている(Abe Y, et al,. Nat Commun, 2015)。しかしベージュ化におけるJMJD1Aの役割は報告されておらず、ベージュ化において如何に寒冷シグナルが細胞に感知され、持続する寒冷環境下OFFの状態の熱産生遺伝子転写がONになるのか、そのエピジェネティックな転写制御機構には未だ不明な点が多い。そこで本研究では、クロマチン免疫沈降法によるエピゲノムの評価により、ベージュ化におけるJMJD1Aを介したエピジェネティックな熱産生遺伝子転写制御機構の解明を試みた。結果、寒冷刺激前のscWATの熱産生遺伝子座は、抑制性のヒストンメチル化修飾が豊富に存在し転写がOFFの状態にあるが、慢性寒冷暴露により、JMJD1AがSer265でリン酸化される事で寒冷シグナルを感知(1st step)し、このリン酸化依存的にJMJD1Aがベージュ化マスター制御因子と複合体を形成、熱産生遺伝子座にリクルートされる。更に、JMJD1Aが脱メチル化酵素活性依存的に熱産生遺伝子座のヒストンメチル化を取り除く(2nd step)、という二段階の機構を介して熱産生遺伝子転写をONにする事を見出した。